Splash Beverage Group(SBEV)――飲料ポートフォリオから「ウォーター資産」ターンアラウンドを狙う超ハイリスク・マイクロキャップ
Splash Beverage Group(SBEV)――飲料ポートフォリオから「ウォーター資産」ターンアラウンドを狙う超ハイリスク・マイクロキャップ
※ Splash Beverage Group(NYSE American: SBEV)は、TapouT スポーツドリンク、Copa di Vino(カップワイン)、Pulpoloco(紙缶サングリア)、SALT テキーラなど、アルコール・ノンアルコールの複数ブランドを保有してきたポートフォリオ飲料企業です。
しかし近年は資金不足により既存事業を事実上ストップし、コスタリカの地下水取水権(「ウォーター資産」)とメキシコ産テキーラブランド(Chispo)を中心とした事業再構築を試みています。累積赤字・継続企業の前提(Going Concern)への重大な疑義・上場維持リスクが重なった、極めてハイリスクでボラティリティの高いマイクロキャップ銘柄です。 😅
1. 会社概要
- 会社名:Splash Beverage Group, Inc.
- ティッカー:SBEV(NYSE American)
- 本社所在地:米国フロリダ州フォートローダーデール(East Las Olas Blvd 近郊)
- セクター / 業種:非景気循環消費財(Consumer Non-Cyclicals) / 飲料(Beverages)
コアとなるビジネスコンセプト
歴史的に、Splash は以下のようなブランドポートフォリオ戦略で知られていました。
- TapouT:スポーツ / 機能性ハイドレーション飲料
- Copa di Vino:使い切りカップ入り「ワイン・バイ・ザ・グラス」
- Pulpoloco Sangria:紙容器(CartoCan)入りサングリア
- SALT Tequila:フレーバー付きテキーラブランド
- Qplash:B2B/B2C 向けの飲料 EC & デリバリープラットフォーム
同社は、**成長余地の大きいアーリーステージ / 割安な飲料ブランドを買収・育成し、それを自社の流通ネットワーク(卸・小売・EC)で一気にスケールさせる「プラットフォーム型飲料企業」**を目指してきました。
2. ビジネスモデル & ブランドポートフォリオ
2-1. 過去のポートフォリオ戦略
- ブランドの発掘 / 買収
- カテゴリー:スポーツドリンク、ワイン、サングリア、テキーラなど
- 差別化要素:ライフスタイル / ポップカルチャー訴求、利便性(カップワイン・紙容器)、機能性(ハイドレーション・パフォーマンス)など
- 流通網の拡大
- コンビニ・酒類チェーン(Thorntons/AMPM、 一部 7-Eleven など)への棚取り
- 地域ベバレッジ・ディストリビューターとの協業(卸パートナー)
- Qplash を通じたオフィス・家庭向けオンライン配送(B2B/B2C)
- 収益モデル(理論上)
- 製品売上 → 粗利 → マーケティング・流通・人件費など固定費をカバー
- ブランド価値が上がれば SKU 拡大、店舗拡大、提携拡大へつなげる
2-2. 2025年時点の「現実」
ところが 2025 年時点で、同社は資本不足により在庫を確保できず、2025年2月以降は実質的に事業を停止したと開示しています。
- Qplash プラットフォームの一時停止
- 既存飲料ブランドの流通・マーケティングも縮小もしくは停止
- 過去には数百万ドル規模の売上を計上していたものの、
2025年 第2四半期は四半期売上「0」を報告
つまり、「複数ブランドを持つ飲料ポートフォリオ企業」という看板は、現在ではほぼ過去形であり、同社は実質的に事業再編・半休眠状態にあると言ってよい状況です。
3. 直近の再編とコスタリカ「ウォーター資産」ストーリー
3-1. コスタリカにおける水利権(ウォーター資産)の取得
2025年6月、Splash はコスタリカ・プンタレナス州ガラビト(Garabito)の地下水採取権および関連許認可(いわゆる「Utopia」資産)を取得しました。
- 特定の帯水層(アクイファー)から一定量の水を採取できる権利
- 会計上は約 2,000万ドルの無形資産として計上(償却なし・無期限資産扱い)
- 高品質な飲料水を採取・ボトリング・輸出するビジネス構想
さらに、同社はUAE(アラブ首長国連邦)の顧客からボトルウォーターの注文を受けていると述べていますが、その注文を履行するには、ボトリングやパッケージ、物流のために約 400万ドルの追加資金が必要であるとも明記しています。
加えて、本格的な生産・輸出体制を整えるには、少なくとも 2,000万ドル以上の追加資本が必要だとも説明しています。
3-2. 戦略的フォーカスポイント(計画ベース)
最新の 10-Q によれば、十分な資金調達が成功することを前提として、Splash は今後以下の 3 つに戦略を集中させる方針です。
- Chispo テキーラのディストリビューション拡大
- コスタリカ・ウォーター資産を活用した水事業(採取・ボトリング・輸出)
- Qplash プラットフォームの再始動
- 主に自社製品を販売するオンラインチャネルとして活用
つまり、ストーリーとしては**「マルチブランド飲料ポートフォリオ」から、「テキーラ+ウォーター資産」に集中した再構築**へとシフトしつつある形です。
4. 財務・バリュエーション・スナップショット(2025年 第3四半期時点)
4-1. 損益とキャッシュフロー
- 2025年 第3四半期までの 9カ月累計純損失:約 2,202万ドル
- 第3四半期単独の純損失:約 988万ドル(1株当たり約 –4.51ドル)
- 累積欠損金:2025年9月30日時点で約 1億7,830万ドル
- 9カ月間の営業キャッシュフロー:約 –382万ドル(キャッシュアウト)
- 現金及び現金同等物:およそ 26万ドル前後(非常に薄いキャッシュクッション)
4-2. 資本構成 & 継続企業の前提(Going Concern)
- 複数の高金利借入金および転換社債を、12%配当のシリーズB転換優先株などのエクイティ型証券に転換し、帳簿上の負債圧縮と資本増強を図っている。
- 2025年3月27日には、**1:40 のリバース・ストック・スプリット(株式併合)**を実施。主目的は NYSE American の上場基準維持。
- それでもなお:
- 流動負債 > 流動資産(負の運転資本)
- 実質的な事業停止に伴う売上ギャップ
- 上場維持と十分な資金調達の不透明感
といった状況から、10-Q では**「継続企業として存続し得るかについて重大な疑義(substantial doubt)」**があると明記されています。
4-3. 時価総額 & バリュエーション
2025年11月末時点(韓国時間ベース、データソースにより若干の差異あり):
- 直近の株価レンジ(ザラ場ベース):おおよそ 0.7〜1.7ドルの間で急激な値動き
- 52週レンジ:約 0.71 〜 13.59ドル(1年で 90%超の下落局面を経験)
- 時価総額:約 200万ドル前後の超小型マイクロキャップ
約 2,000万ドルで計上されているウォーター無形資産と比較すると、帳簿上の資産価値に比べて時価総額は極端に低い水準にあります。
とはいえ、この資産が実際にキャッシュフローを生み出せるかどうかは、今後の資金調達とプロジェクト実行に全面的に依存しています。
さらに 2025 年には、NYSE American が SBEV およびそのワラントについて上場廃止(Delisting)手続き開始を通知したという開示もあり、上場維持そのものが重要なリスク要因となっています。
5. 強気要因(Bullish ポイント)
「この銘柄をあえて見る理由になり得る材料」
- ブランド資産と流通レガシー
- TapouT、Copa di Vino、Pulpoloco、SALT などは、米国内で一定の販売実績を持ち、コンビニや酒類チェーンでの棚取り経験があります。
- 将来的に在庫再調達・再ローンチに成功すれば、再稼働モメンタムのような短期テーマになり得ます。
- ウォーター資産のオプション価値
- コスタリカの水利権は、無期限の無形資産として帳簿上約 2,000万ドルで計上されています。
- 高品質な飲料水の輸出ストーリー(特に UAE 向け受注)が現実化した場合、
「飲料ポートフォリオ企業」から**「プレミアムウォーター+テキーラ銘柄」**として再評価される余地があります。
- デット・エクイティスワップによるバランスシート改善の試み
- 一部の借入金やノートが優先株に転換され、帳簿上の負債が減少し、資本が増加しています。
- さらに追加のエクイティ資本を獲得できれば、短期的な生存リスクは一定程度和らぐ可能性があります。
- 極端な低株価と高ボラティリティによるイベントトレーディング余地
- 52週高値から 90%以上下落し、時価総額約 200万ドルというマイクロキャップ特性上、
資金調達ニュースやプロジェクト進展、事業再開に関するヘッドライン次第で、
数十〜数百%単位の急激な株価変動(イベントドリブン)が発生し得ます。 - 純粋なトレーディング観点では、イベントドリブン型・超ハイベータ・マイクロキャップとして扱われる余地があります。
- 52週高値から 90%以上下落し、時価総額約 200万ドルというマイクロキャップ特性上、
6. 弱気要因(Bearish リスク)
この銘柄を見るときに「まず最初に」確認すべきポイント
- 継続企業(Going Concern)リスク
- 10-Q で、資本不足・累積欠損・負の運転資本などを理由に、継続企業としての存続可能性に重大な疑義があると明確に記載されています。
- 追加資金の調達に失敗した場合、
資産売却(ウォーター資産を含む)、大規模リストラ、さらには破産法適用といった極端なシナリオも排除できません。
- 事業停止と売上ギャップ
- 2025年2月以降、在庫を確保できないため実質的にオペレーションが停止した状態が続いています。
- 2025年 第2四半期の売上は「0」と報告されています。
- キャッシュフローを生む本業が存在しないまま時間が経過すればするほど、デフォルトや希薄化(dilution)のリスクは増大します。
- 継続的な赤字と希薄化リスク
- 2025年9月末時点で累積欠損金は約 1億7,830万ドル、9カ月純損失は約 2,200万ドル。
- 債務返済や運転資金確保のため、
- 新たな転換優先株
- ワラント付証券
- 追加の株式発行(増資)
といった手段に依存せざるを得ない可能性が高く、
これは既存の普通株株主にとって大きな希薄化要因となります。
- 上場維持(Delisting)リスク
- 1:40 の株式併合を実施したにもかかわらず、NYSE American は SBEV とそのワラントに対する上場廃止手続きを開始しています。
- 上場廃止となれば、流動性は大幅に低下し、株式は OTC(店頭市場)に移行します。
リテール投資家にとっては、スプレッド拡大・約定リスク増加など不利な条件が一気に高まります。
- ウォーター資産のマネタイズ不確実性
- 水利権は 2,000万ドルで計上されていますが、これを現実のキャッシュフローへと変換するには、
少なくとも 400万〜2,000万ドル規模の追加資本(ボトリング設備、物流、スケールアップなど)が必要です。 - 実行に失敗した場合、将来的に**減損損失(impairment)**が発生し、さらなる資産・自己資本の毀損につながるリスクもあります。
- 水利権は 2,000万ドルで計上されていますが、これを現実のキャッシュフローへと変換するには、
7. 投資家が見るべきチェックポイント & ストラテジーメモ
SBEV をウォッチリストに入れる場合、最低でも次の 4 点は継続的に追うべきです。
- 資金調達に関するニュース
- いくら、どのような形態(普通株、優先株、CB、ワラントなど)で、どの条件で資金を調達したのか
- 調達後、運転資本がプラスに転じるのか、それとも短期延命レベルにとどまるのか
- ウォータービジネスの実質的な進展
- コスタリカにおけるボトリング設備の着工・完成
- UAE など海外顧客向けの実際の出荷と売上認識の開始
- 信頼できるカウンターパーティとの長期オフテイク契約(引き取り契約)の締結
- 既存ブランドの再ローンチ有無
- TapouT、Copa di Vino、Pulpoloco、SALT / Chispo など既存・新規ブランドが
再び大手リテール(総合スーパー、コンビニチェーン等)の棚を獲得できるかどうか
- TapouT、Copa di Vino、Pulpoloco、SALT / Chispo など既存・新規ブランドが
- 上場規則遵守 & SEC フィリング
- NYSE American の定量基準(株価、時価総額、自己資本など)を満たしているか
- 上場廃止手続きの進捗状況
- 10-K / 10-Q における Going Concern 言及の変化、
報告遅延(NT 10-Q)の有無と理由 など
8. クイック Q&A(FAQ)
Q1. SBEV は現在も飲料を積極的に販売しているのでしょうか?
→ 通常の意味で「積極的に販売している」とは言えません。
同社は 2025年2月以降、資金不足により在庫を確保できず、実質的にオペレーションを停止したと公表しています。その結果、2025年第2四半期の売上は 0 となりました。
現時点の SBEV は、「本格稼働している企業」というより、**ウォーター資産とテキーラを軸に“再スタートを計画している段階”**に近い状況です。
Q2. コスタリカのウォーター資産とは具体的に何ですか?
→ コスタリカの特定地域にある帯水層に対する地下水採取権と、それに付随する許認可です。
高品質な飲料水を採取し、ボトリングして輸出することを構想しています。
この権利は約 2,000万ドルの無期限無形資産として計上されていますが、同社自身が、
設備建設・オーダー履行のために最低 400万〜2,000万ドルの追加資本が必要だと述べており、その経済価値は将来の資金調達と実行力に大きく依存しています。
Q3. 現在の SBEV の財務状態は?
→ 2025年9月30日時点で、累積欠損金は約 1億7,830万ドル、9カ月間の純損失は約 2,200万ドル、営業キャッシュフローは約 –382万ドルです。
手元現金は約 26〜30万ドルに過ぎません。
10-Q でも、継続企業として存続し得るかどうかについて重大な疑義があると明言されています。
Q4. どのようなタイプの投資家に向いている銘柄でしょうか?
→ SBEV は本質的に、次のような特徴を持つ**「超ハイリスク・ターンアラウンド型マイクロキャップ」**です。
- 現時点で意味のある本業キャッシュフローを生んでいない
- ビジネスプランの実行が新たな資金調達に強く依存している
- 上場維持・財務健全性に大きな不確実性がある
そのため、適しているのは:
- イベントドリブン・超ハイリスク・短期トレーディングを志向する投機的投資家
- ポートフォリオのごく一部を、ハイリスクなスペキュレーティブポジションに割り当てる投資家
といった層に限られると考えられます。
安定配当・強固なキャッシュフロー・健全なバランスシートを重視する投資家にとっては、SBEV はほぼ不適切な銘柄と言えるでしょう。